多機能本棚
□きっかけ 設計の仕事をしていると、過去の建築家の作品、新しいアイデアや、考え方、材料、作り方、法律、などなど、書籍の資料が増えてしまいます。 この大量の本をどうするか? ぼんやり考え出したのが始まりでした。
□スペースの問題 本が増えたら、本棚を買い足します。 カラーボックス等の低価格の既製品を並べる事で、簡単に解決出来るのですが、今後も増え続けるであろう本に対して、床のスペースは限られています。 その簡単な解決法の可能性は将来に残すとして、床を確保し、壁の上部に収納場所を造る事にしました。
□壁の上部に設ける事による問題。 空間の上部に設ける事で、新たな問題が発生します。 低い位置と比べて、地震時に本が落下した時の危険性が高まります。 この問題に対しては、本を斜めに傾けて収納し、本が落下しにくい状態としました。
□本棚の形状 角度を付ける場合、面材のみで構成すると、嫌な隙間が生まれてしまいます。 横の材を棒材とする事で、嫌なすき間ではなく、自然なすき間となりました。
□棒材を使う利点 面材のみで構成すると、かなりの圧迫感があります。 棒材とする事で、軽やかになり、圧迫感が軽減されています。
これはおそらく、経験があると思いますが、本を収納していくと、奥で本が広がり、上手く入らない事があります。 横材が棒なので、奥でも手が入り、容易に本の位置を整える事が出来ます。
本を取り出すには、一般的に上の隙間に指をかけて取出すと思いますが、この本棚は高い位置にあり、本の上には踏み台が無いと手が届きません。 しかし、取りたい本を下から指で押し上げる事で容易に取り出す事が可能です。
面材の場合も、この動作で出来ない事は無いのですが、本の角に負担がかかり、本が傷みます。 丸棒であれば、本を傷めることなく、スムーズに取出しが可能です。
また、下から見た時に、乗っている物の見える範囲が広いのも利点の一つです。
□材料 縦材にはペーパーウッドという合板を使用しています。 合板に色付きの紙が挟んであり、木口(切った切り口の部分)が美しい材料です。
□機能の追加 荷重は受材で受けています。 この受け材には、構造的な役割だけでなく、S字フックを掛ける機能を追加ました。
また、本棚の下に棒を一本追加して、ハンガーパイプとしました。 机の前などには、S字フックを使う事で、資料や文房具など、様々な物が掛けられます。
なお、本を載せる棒部分には、箱状のもの、面状の物、棒状のもの、横棒同士の間隔より大きいものであれば載せる事が可能です。 設計時には意識していなかったのですが、コンポやクリップライトなど、コンセントが必要な機器を設置しても、穴あけ無しで使える所も便利です。
□名前? 「本をどうするか?」から思考がスタートし、最終的には、「色々な使い方が出来る棚的なもの」が生まれました。 思考のプロセスを考えると、本棚に色んな機能を追加していったので、「多機能本棚」でしょうか? もっと気の利いた良い名前が付けられたら良いのですが、語彙力がないのが残念です('Д')
□これも建築 どう使うのか? どんな問題があるか? 解決法はどれが良いか? なぜそうなのか? もっと良い方法はないか? この方が素敵!? 面白い! 楽しい! そういった、、アイデアや使い方、様々な条件を一つ一つ考えて行く事が設計です。 だから、とても時間がかかるし、設計した人の人柄が反映されます。 家も家具も同じで、そういったものを全部ひっくるめて、僕は「建築」と呼びます。 愛着が沸く建築。使っていて楽しい建築。 人生が少しでも豊かになるような建築を作りたいです。
2020年7月 建築家 三田 真臣
□きっかけ
設計の仕事をしていると、過去の建築家の作品、新しいアイデアや、考え方、材料、作り方、法律、などなど、書籍の資料が増えてしまいます。
この大量の本をどうするか?
ぼんやり考え出したのが始まりでした。
□スペースの問題
本が増えたら、本棚を買い足します。
カラーボックス等の低価格の既製品を並べる事で、簡単に解決出来るのですが、今後も増え続けるであろう本に対して、床のスペースは限られています。
その簡単な解決法の可能性は将来に残すとして、床を確保し、壁の上部に収納場所を造る事にしました。
収納前
収納後
□壁の上部に設ける事による問題。
空間の上部に設ける事で、新たな問題が発生します。
低い位置と比べて、地震時に本が落下した時の危険性が高まります。
この問題に対しては、本を斜めに傾けて収納し、本が落下しにくい状態としました。
□本棚の形状
角度を付ける場合、面材のみで構成すると、嫌な隙間が生まれてしまいます。
横の材を棒材とする事で、嫌なすき間ではなく、自然なすき間となりました。
□棒材を使う利点
面材のみで構成すると、かなりの圧迫感があります。
棒材とする事で、軽やかになり、圧迫感が軽減されています。
これはおそらく、経験があると思いますが、本を収納していくと、奥で本が広がり、上手く入らない事があります。
横材が棒なので、奥でも手が入り、容易に本の位置を整える事が出来ます。
本を取り出すには、一般的に上の隙間に指をかけて取出すと思いますが、この本棚は高い位置にあり、本の上には踏み台が無いと手が届きません。
しかし、取りたい本を下から指で押し上げる事で容易に取り出す事が可能です。
面材の場合も、この動作で出来ない事は無いのですが、本の角に負担がかかり、本が傷みます。
丸棒であれば、本を傷めることなく、スムーズに取出しが可能です。
また、下から見た時に、乗っている物の見える範囲が広いのも利点の一つです。
□材料
縦材にはペーパーウッドという合板を使用しています。
合板に色付きの紙が挟んであり、木口(切った切り口の部分)が美しい材料です。
□機能の追加
荷重は受材で受けています。
この受け材には、構造的な役割だけでなく、S字フックを掛ける機能を追加ました。
また、本棚の下に棒を一本追加して、ハンガーパイプとしました。
机の前などには、S字フックを使う事で、資料や文房具など、様々な物が掛けられます。
設置前
設置後
なお、本を載せる棒部分には、箱状のもの、面状の物、棒状のもの、横棒同士の間隔より大きいものであれば載せる事が可能です。
設計時には意識していなかったのですが、コンポやクリップライトなど、コンセントが必要な機器を設置しても、穴あけ無しで使える所も便利です。
□名前?
「本をどうするか?」から思考がスタートし、最終的には、「色々な使い方が出来る棚的なもの」が生まれました。
思考のプロセスを考えると、本棚に色んな機能を追加していったので、「多機能本棚」でしょうか?
もっと気の利いた良い名前が付けられたら良いのですが、語彙力がないのが残念です('Д')
□これも建築
どう使うのか?
どんな問題があるか?
解決法はどれが良いか?
なぜそうなのか?
もっと良い方法はないか?
この方が素敵!? 面白い! 楽しい!
そういった、、アイデアや使い方、様々な条件を一つ一つ考えて行く事が設計です。
だから、とても時間がかかるし、設計した人の人柄が反映されます。
家も家具も同じで、そういったものを全部ひっくるめて、僕は「建築」と呼びます。
愛着が沸く建築。使っていて楽しい建築。
人生が少しでも豊かになるような建築を作りたいです。
2020年7月 建築家 三田 真臣